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「スターターで胃づくりをしましょう」五島地区家畜診療所 獣医師 佐野 隆史

2023.09.20

診療所情報

胃づくりとは、第一胃の絨毛(じゅうもう)を育てることです。絨毛とは、第一胃の内側を黒い絨毯のように覆っているものであり、濃厚飼料中のデンプンが発酵されてできた酸(VFA=揮発性脂肪酸)を吸収する器官です。牛はこのVFAを主なエネルギー源としています。そして、この絨毛を育てるためには、VFAによる化学刺激が必要で、濃厚飼料を食べることで胃づくりが為されるわけです。

育成飼料でも当然胃づくりはできるはずですが、子牛によっては、これが上手くいかないケースが出てきます。それがルーメンアシドーシスと呼ばれる状態で、第一胃の中が酸性に傾いていることを指します。

育成飼料はスターター(仔牛に与える離乳食)に比べ、タンパク質に対してのデンプンの比率が高いためVFAをたくさん生成し、絨毛が発達した子牛ではこれをエネルギー源として良好な発育ができますが、絨毛が発達していない子牛では大量のVFAを吸収できず、酸が第一胃に溜まっていき、あるいは下部消化管にも流れ込んで、消化管全体の機能を低下させます。つまり、下痢が続き、反芻時に白い泡のような涎を出すようになり、最終的に食欲がなくなります。

一方スターターでは、育成飼料に比べタンパク質の比率が高く、それが分解されてできるアンモニアが酸を中和するため、ルーメンアシドーシスを進行させることなく絨毛を育てることができます。

 

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