子牛の臍帯炎(さいたいえん) 県南地区家畜診療所 中村 志野
2022.09.30
診療所情報臍帯は、胎子期に母体からの栄養供給と胎子の老廃物の排せつを担う管状の構造物です。通常分娩と同時にちぎれ、外部の露出部は乾燥後脱落、お腹の中につながる管は成長とともに閉鎖・退縮します。完全に乾燥するまでは細菌が付着・増殖しやすい状態にあり、細菌が感染し炎症が起こると、発熱、へそが腫れるなどの症状が出ます。また、へそから侵入した細菌が血流に乗ることで肺炎や関節炎の原因になるなど、子牛の発育に悪影響を及ぼします。
治療法は、抗生剤の全身投与や、必要に応じて切開・洗浄を行います。お腹の中に膿瘍ができると手術が必要な場合もあります。予防対策は、子牛が座ったときにへそと床が接するため、分娩房やハッチの衛生管理、十分な免疫力をつけるための良質な初乳の給与が重要です。また、分娩時にへそから出血があった場合は、溜まった血液が細菌の温床になるため早期に止血して血餅を取り除くこと、ヨード系の消毒薬などによる消毒をへそが乾燥するまで行うことで、発生を減らすことができます。