牛のコクシジウム症 佐世保地区家畜診療所 獣医師 岡部 浩一
2022.04.01
技術情報寄生虫による消化管感染症で、一般的には生後3週齢~1年程度の若牛に被害が多く、牛では13種類以上のコクシジウムが認められています。中でもEimeria bovisとEimeria zuerniiは高い病原性を有し、下痢や血便を引き起こします。コクシジウムに感染した牛はオーシスト(卵のようなもの)を含むふん便を排せつします。オーシストは一定期間をおいて成熟することで感染性を持ち、成熟オーシストを口から摂取することで感染します。
《症状》泥状~水様性下痢。重度感染では血便が認められ、死亡することもあります。
《治療》サルファ剤(ダイメトン、エクテシン)、ジクラズリル製剤(ベコクサン)等の抗コクシジウム剤の投与。
《予防》症状は感染量に比例するとされ、牛の口に入るオーシストを減らすことが予防につながります。環境中のオーシスト除去―敷料、床の定期的な交換やオルソ系消毒薬を用いた踏み込み槽の設置、牛舎の壁、柵、床への石灰乳塗布なども推奨されています。コクシジウムのオーシストは非常に強い殻に守られており、一般的な消毒薬に対しては抵抗性がありますが、オルソ系消毒薬(トライキル、タナベゾール)や高温、乾燥に弱いといった特徴があります。またトルトラズリル製剤(バイコックスなど)の投与も有効ですが、最適な投与時期は農場ごとに異なり、感染時期や種の特定を行うことが重要です。まずは担当獣医師と相談し必要に応じて検査を行った後、薬剤投与を検討してください。