NOSAI長崎

お知らせ

蹄病について

2016.09.01

技術情報

NOSAI長崎

家畜診療・研修センター

所長 宮﨑 康郎

 

 自分で牛の削蹄をする方もいらっしゃると思います。私も左手ではやさしくソフトタッチの妊娠鑑定を心がけていますが、右手では、2級削蹄師として勢いよく的確な鎌さばきを習得できるよう修行中です。ただ、昔と違って5分も屈んでいると、腰痛が辛いです。

 

蹄病を

① “蹄(ひづめ)の病気”と

②それ以外の皮膚に生じる“皮膚の病気”に分けて説明します。

 

蹄の病気

 蹄は一か月に5ミリ程伸びて、“蹄壁”は15ヵ月くらい、“蹄底”は2ヵ月くらいかけて入れ替わります。例外もありますが、今、見えている蹄の異常は数ヵ月前の出来事が原因かもしれません。重心バランスのせいで、前肢では内蹄、後肢では外蹄に多く病気が発生しやすいのですが、さらに詳しくみると、構造的にも“弱い部位”が存在します「写真①」。糞尿でいつも湿っているコンクリート牛床、バランスの悪い飼料設計や飼料の急変、伸びすぎた蹄、環境ストレスなどがあると、その“弱い部位”に障害が起きやすくなります。特に蹄の内部に膿が溜まったときや「写真②」、先端部(蹄尖部)に障害が起きたときには歩けなくなるほど痛がります。

 

皮膚の病気

 皮膚の病気は湿っている環境で増えた特殊な菌が原因です。同じ環境でも病気にかかる牛と、かからない牛がいますので、牛の抵抗力も関係しているようです。「写真③」の病気は乳牛で多く見られる皮膚の感染症で、触ると激痛がありますが、治療に抗生物質が必要な場合も多いです。趾間にできる大きなイボは、蹄の伸びすぎや、趾間の汚れや感染などによって皮膚刺激が長く続いた場合に生じますが、遺伝性だとする説もあります。

 

連携

 蹄病対策には削蹄師さんの存在がとても重要です。

 蹄が伸びすぎると蹄病が増えるので定期的に(年に2~3回)削蹄を依頼してください。痛みを伴う“蹄の病気”や“皮膚の病気”は獣医師の処置が必要になる場合が多いので、獣医師と削蹄師さんの連携が上手くいくように活動していきたいと考えています。

 

まとめ

①牛床の環境をできるだけ乾いた状態にしておく。

②ストレスの少ない飼養環境に努める。

③適正な飼料設計を行い、飼料内容の変更は緩やかに行う。

④定期的な削蹄を行う。

⑤早めに獣医師にご相談いただく。

 体のわりには小さな蹄ですが、体重だけでなく皆さんの畜産経営も、しっかり支えているんだと思いやりながら観察してみて下さいね。

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